一寸の喪女にも五分の愛嬌を


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「ごめん……」


 ポツリと謝れば、成瀬は首を横に振り、私の髪を優しく撫でる。

「謝ることなんかないのに。来てよかった。てかもっと頼ってよ、俺を」

 笑いながらミネラルウォーターのペットボトルをベッドに横たわる私に手渡してくれた。

「飲みづらいなら、口移ししましょうか?」

 おどけた口調の成瀬を睨み付け、半身を起こして水を喉に流し込む。

 冷えた水がほてった体に心地良く、頭までクリアになる気がした。

「結構熱あるじゃないですか。会社でも無理してたんでしょ、先輩のことだから」

 成瀬が額に手を当てて私の熱を測る。

 その手はひやりとしていて、とても気持ちいい。


 長い間、こうして誰かに手で熱を測ってもらったことがなかった。

 懐かしい感情で、胸の中が暖まる。


 不覚にも、成瀬の顔を見た途端、私は張り詰めていた糸が切れたように、足の力が抜けて成瀬の腕の中に倒れ込んでしまったのだ。

 驚きながらも私の肩を抱いた成瀬は、熱があることにすぐに気がつき、ベッドまで運んでくれ、更に額に絞ったタオルまで乗せてくれた。


 今はベッドの横に片膝を立てて座りながら、私を見つめている。