待っているつもりなどなかった。
会社でとってしまった失礼な態度を思い返せば、約束していても、成瀬が来なくても納得だ。助けてくれたのに腕を振りほどいてしまった。
それなのに私は帰宅するなりシャワーを浴び、部屋を片付け赤ワインとビールを冷やす。
「イヤだ……まるでいそいそと待っているみたいじゃない」
つまみまで作ろうかと思ったところで我に返り、ベッドにボフンと寝転がる。
「そうだ、ゲーム……ああ、やっぱり眠たいな」
薬が効いているからか喉の痛みや熱はないけれど、転がるとどうしようもないほど眠気が襲う。
ああ、だるいな、と呟くともう眠りの世界に落ちてしまいそうだ。
食欲もない。それにこんな体調でお酒を飲んでもいいのだろうか?
色々と考えを巡らせていると、もう待っているのも馬鹿らしくなってくる。
このまま布団を被って眠ってしまおうか、と思った途端にインターフォンが私を呼び出した。
「……成瀬、来たんだ」
閉じていた目をそっと開く。

