一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「わっ! もうすぐイベントが終わるじゃない! もう、成瀬君、起きてよ」

 こんなことならもっと余裕をもってイベントを進めておけばよかった。ここまでギリギリになるなんて思いもしなかったから、のんびり進めてしまっていた。

 私は辺りを見回してから、眠る成瀬の前に膝をつく。

「これくらいの上玉の男なら、通りかかりのOLさんが拾ってくれるかもしれない」

 立ち上がり決意とともに宣言した。

「よし、放置決定」

 案外大きい声が出ていたのかもしれない。

 ううん、と唸った成瀬がうっすらと目を開き、私を見上げて言った。

「せ、先輩……気分悪い……トイレ……」

「トイレ!?」

 起きたのかと思えば、面倒なことを言い出した!

 トイレが使えそうなコンビニまでは少し遠いのだ。

 だいたい、それほど飲んでなかったはずなのに、こんなに酔ってしまうなら、相当お酒が弱いのだろう。自制して飲めよ、と叱りたい。

「ああああ、もう仕方ない! 歩ける? うちのトイレ貸してあげるから、しっかり歩いて!」

 背に腹は代えられない。一刻も早く帰ってイベントをしたい。

 こいつに付き合ってコンビニまで往復する時間ももったいないから、トイレくらいなら貸してあげよう。

 そう決めて、成瀬に肩を貸した。