きっかけは、人妻の一言だった。


「子供達の、未来が不安で不安でしょうがないの…」


伏し目がちにそう言う人妻は、長い髪を水玉のシュシュで結って、首の横から垂らしている。

生命の宿ったお腹を愛しそうに撫でる姿は、正にマリア様の様でその慈愛に触れたい。と、何とも言えない胸を縄で締め付けられバチで連続で叩かれた様な鼓動の激しさに襲われた。


「僕…見てきましょうか…。」

滑らかに出た僕の言葉に

「…っへ、え?」


いやいや、あそこの電柱に止まってるのは、カラスかスズメか確かめてくるんじゃないんだよ?

とでも、人妻は言いたそうだ。

「僕、見てきます。」

あそこに止まっているのは、真っ黒でカァカァ鳴いてるから、確かめるまでもなく99%の確率で、カラスだろう。

だけど、例えば1%

あれは、カラスの着ぐるみを来たオウムだったら…。

予想を裏切る事実がそこには、あるかもしれない。


僕は、不安感を消せる様な事実を確認する為に
今から人妻の子孫に会いに行く。


―――――…未来へ。