「なに?」
「別に〜。先輩にも可愛いところあるんだって思ったの」
ますます頬をゆるゆるにしている美樹の言っていることをあたしは全く理解できなかった。
どういうこと?って何度聞いても“なんでもないよ”の一点張り。
あたしは渋々諦めた。
ただ最後の“いつかわかるよ”という言葉に引っかかりを覚えた。
* * *
その日の放課後。
久しぶりの部屋。久しぶりの香り。
窓から覗く空は珍しく快晴で、もう夏が来ることを知らせているような綺麗な紺碧色だった。
「まずは実力を見たいからこの問題解いて?」
「…わかった」
あたしはヒナタの部屋にて勉強を教わっている。
教科は苦手な社会科。
世界史も日本史も公民も地理も全くってわけじゃないけど、覚えられないしわからない。



