「ごめんなさい!!」
あたしは震える足でありったけの力を込めて健二くんの鳩尾を蹴った。
「ッウグ」
苦しそうに健二くんはあたしから離れる。
その隙にあたしは自分のカバンを取って走り出した。
「っおい!待て!!」
後ろから声がしたけどもう知らない。
怖い…怖い怖い。
ただそれだけ。
ヒナタのバカ。
嘘つき。
あたしを襲う人なんかいないって言ったじゃん。
ココにいたよ、物好きが。
ヒナタの嘘つき。
あんぽんたん。
悔しくて、悲しくて今にも溢れそうな涙を堪えて走り続ける。
きっと電車に乗らなかったらあたしは泣いていた……。



