「ただいまー」
「あら、ハナノちゃんおかえりー!」
「真紀さん!?」
「久しぶりねー」
リビングのドアを開けたら、ヒナタのお母さんの真紀さんがニッコリと笑って手を振ってきた。
あたしも慌ててぺこりとお辞儀する。
「ハナノ、遅かったね」
「…美樹…、友達と寄り道してて」
ヒナタは相変わらず、うちの両親には王子様の顔をしていて、久しぶりに見るヒナタの王子様モードに苦笑いしかできなかった。
といっても文化祭の時も王子様モードだったのだけど。
これは最近気づいたことなのだが、どうやら複数の王子様モードを使い分けているらしい。
全校生徒に見せる笑顔とあたしの両親に見せる笑顔が微妙に違う。
でも、共通して言えることは、
ヒナタの作り笑顔はいつ見ても完璧だなあ。
尊敬するわ、本当に。



