するとヒナタは少し顔を歪め、短くため息を吐いた。
「…あっそ。よく分かった」
「え」
「ハナノは先帰ってろ。俺、寄るところがあったから。気をつけて帰れよ。じゃあな」
「ちょ、ヒナタ!」
早口で喋ってヒナタはすぐにあたしの前から姿を消した。
さっきまで左にあった影はもうなくて、あたしの影がひとつ、ぽつんと地面に映っている。
寒いし、暗いし、早く帰らなきゃと足を早めた。
「ヒナタのばーか」
置いてかないでよ。
寒いし、暗いし、ここらへんは街灯が少ないんだもん。あたしだって怖いんだもん。
不審者に襲われたらヒナタのせいにしてやる!
「って、ははっ。ヒナタに言わせれば、あたしを襲うような物好きはいないんだっけ」



