その廃レストランは20年くらい前に廃業し、なぜか建物は現在もそのまま残されていた。
僕たちが住む町から、少し外れた森を抜けた場所に、それはある。

周囲には何もなく、夜でなくても不気味な場所だ。

これは僕が、まだ学生だったころの話だ。
あの日、見てしまった「おぞましいもの」は
忘れたくても
今でも鮮明に記憶している。

当時、運転免許をとったばかりで
とにかく車を運転したくてドライブに行きたかった友人の一人が

「峠の廃レストランに『きもだめし』に行かねーか?」

そんなふうに言い出したのが事のはじまりだった。

男ばかり4人でドライブに出発したのは深夜1時頃
幽霊なんか信じてなかった僕は
単なる深夜ドライブが楽しく、少しワクワクしていた。

行き先の廃レストランは
経営に失敗した経営者が店のなかで焼身自殺した場所で
建物を取り壊そうとしたら原因不明の事故が続いてしまい、
今では誰も手をつけていないため廃墟となったまま残ってるとのこと。

そんな目的地についての情報が
心霊スポットへ向かう車のなかで話題となっていた。

しかし
そんな感じでワイワイ話してる車中で、
ただ一人ずっと黙ってるやつがいた。
彼の名前は木下。いつも賑やかで僕らのなかではムードメーカー的な存在だった彼が、
なぜか今日はおとなしい。

「どうした?」

僕が彼に、そう尋ねると…

「いや…何でもない」

そう答えていたが
いつもは人一倍しゃべるやつが明らかに様子がおかしいと僕は感じた。

たしか…
出発した頃は普通だったのに目的地に向かって山道に入ったあたりから急に静かになったような気がする。

僕は急にこれから向かう心霊スポットに対して不安な気持ちになっていた。