また、部屋に誰かがいた

季節はすっかり冬となった病院で相変わらず明るい香織だったが、それは心の中の悲しみを必死で隠しているかのようだった。
その日は朝からテレビで雪の予報を伝えていた。
病室では、いつものように香織の隣にはP15がいた。

「ピーくんは雪を見たことある?」

「ユキ・ミマシタ」

香織はふと、ベッド脇に置かれた道原からのプレゼントを見た。
元気になって、退院して、また学校に行けるようになって、そのお揃いの帽子とマフラーを付けて道原と歩く自分を何度も想像した。でも…

たぶん…それは無理だ…

だから…今の自分の気持ちはこのまま自分だけのものにしよう。香織はそう考えていた。

彼女は、ふと窓の方に視線を移した。
そこから中庭の方を見ていた香織の目が急に輝き始める。
彼女はP15に振り返って大きな声で言った。

「ピーくん!中庭に行こう!」

慌ててベッドから出ると、上着を羽織り、赤と白のストライプ柄の帽子と、その同じ柄のマフラーを手に取って、香織は病室の扉を開け、廊下に出ると駆けだした。

「マッテクダサイ」

後を追うP15の前を走る香織は中庭の方へと向かっている。

「カオリサン・ソトニデテハ・イケマセン」