また、部屋に誰かがいた

泣きじゃくる香織のベッドの横にあるごみ箱のなかには破り捨てられた書きかけの手紙。
P15は静かに香織の隣で佇み、彼女の泣く声が病室に響いていた。
P15に彼女を慰めるような機能はない。ただいつも隣にいるだけだ。
しかし、その日、そんな機械はなぜか悲しそうに見えた。
それから数日の間、切ない片想いを振り切ろうとしている香織は元気がないように見えて彼女の両親は心配した。

「香織、どこか痛かったりしたら、すぐ看護師さんに言うのよ」

「ううん、大丈夫だよ。お母さん」

そんな会話もP15は黙って聞いているだけだった。

そんなある日の夕刻にP15は香織の後をついて病院の待合室に近い廊下にいた。

香織が並んだ椅子の間を進む。
P15にとってはやや狭い通路だ。
すると突然、案内掲示用のボードが香織の手によってP15の前に置かれた。

「……!!」

「かかったな!ピーくん!」

香織はそう言うと売店に向かって駆けだした。
なんとかそこを脱出しようとしているP15の音声モニターに売店での香織の声が


「おばさーん!肉まん1個くださーい!」