絢斗の顔を見てホッとし
泣いたのはいつぶりだろう
ーあ、小学2年の時
お母さんとケンカをして
家を飛び出した時だ
いつも遊んでいた公園の隅に置かれているトンネル型の滑り台で
うずくまって泣いていた
迎えに来てくれたのは
お母さんではなく、絢斗だ
「おばさんを心配させるな」
絢斗はいつも、いつまでも
私のお兄ちゃんだ
『絢、斗…』
「ああ、大丈夫だ。優は?」
あっちと、指をさす
絢斗は私をベンチに座らせ
待ってろと指をさした方へと行ってしまった
救急車で運ばれて10分
慌ただしかったが
いつの間にか静かになりつつあった
どうなったか気にはなっていたが
優さんの真っ青な顔を思い出すと
足が竦んで動けなかった
だって、
優さんに何かあったら…私ーー、
私は、どう…する、んだ?

