黙っていたらいい男だ
少なからず憧れ的な
好意を抱いた相手だったから…
「何がダメ?藍のこと骨の髄までしゃぶり尽くすよ?」
優さんの指先は
これから獲物を食そうと
私の髪の毛をクルクルと回している
ゴクン、と生唾を飲み込む
もうダメかと思った時
ブーッ、ブーッ、とバイブ音がした
私ではなく、優さんの携帯だ
私から離れた事にホッとし
優さんと距離をとった
どうやら電話の相手は絢斗みたい
仕事の話みたいで
「今戻る」
そう言って携帯を耳から離した
「時間切れ」
玄関へ向かう優さんを追いかける
避けたいところだが
ご馳走になった手前、そうもいかない
「藍、」
ーーおやすみ
そう言って行ってしまった
何も返せなかった私は
おデコに手を添える
おデコが熱い
おやすみと同時に触れた
それを認識するとおデコから
徐々に身体が熱くなってしまった

