「スズキくん、あの……」
「はい、何です?」


 柔らかい口調で話してくれる、スズキくんの低い声が心地いい。


「こ、この間は酷いこと言ってごめんなさい……」
「大丈夫……ではなかったですけど。もう、大丈夫です」


 そう言って苦笑するスズキくんに罪悪感で胸が痛む。


「あのね、私ずっと考えてたの、スズキくんのこと。本当はどう思ってるのか、スズキくんの気持ちが本当に迷惑だったのかって」
「……」
「私、スズキくんに嫌われるのがすごく怖かった……。このまま、卒業するまで目も合わせられないで過ごすことを考えたら、苦しかった。それで、スズキくんがいつか他の誰かを好きになっちゃうことを考えたら、切なかった……」


 スズキくんは何も言わず、ただ静かに私の話を聞いてくれていた。そのおかげなのか、私は自分でも驚くくらい素直に自分の気持ちを伝えることができた。


「部長」
「はい」
「そういうのを世間一般じゃ『好き』って言うんですよ」


 目尻を下げて柔らかく微笑みながら、スズキくんはまるで私の気持ちに光を差し込むように答えをくれる。私はもうとっくにスズキくんに恋をしていたんだと。


「サクタ部長、大好きです」
「……私も」


 スズキくんの腕の中は、とても温かくていい香りがした。