「むかつく…タヌキチのくせに」
「その呼び方やめろよな、いいかげん」
「タヌキチ!タヌキチ!タヌキチ!」
「お前は小学生か」


 タヌキチ必殺の脳天割りチョップを食らった。頭がジンジンする。


「こんにちは~!先輩達もう来てたんですね!」
「うん、私とタヌキチも今来たとこだよ」
「タヌキチ先輩何してるんです?」
「エアコンの温度設定。あとその呼び方やめてミチルちゃん」


 私とタヌキチに次いでやってきたのは二年生のミチルちゃん。部内では私を含めたもう一人の貴重な女の子だ。因みに軽音部のポジションはキーボードと主な作曲を担当している。
 見た目は化粧も髪型もバリバリでそれが似合っちゃうくらい可愛い子なんだけど、性格というか喋り方が完全なぶりっ子で女子からの反感を買いまくっているらしい。
 本人は「あたしが可愛いからってひがんでる女に興味ないんで~」とか言っていたから、たぶん大丈夫なんだと思う。
 それにミッチャンを本気で怒らせると鬼より怖いということは、私達の先輩で今はもう卒業してしまった前任の部長がやらかしてくれたおかげで確認済みである。その時の記憶は私の脳内フォルダーが早々に消去を命じたのでおぼろげにしか覚えていないけど、とにかく悲惨だった。正直、もう二度と思いだしたくない。