「ありがと!」
「あのさ、天地さん。今日よかったら一緒に帰らない? 確か帰宅部だったよね?」
「帰るのはいいけど。……でも、西名くんに変な噂がたたない?」
「俺は天地さんとなら、どんな噂がたっても構わないよ」
「……え?」
ふたたび目を見張る時雨に、優は小さく笑みをこぼす。
「だって、付き合ってるんだよね? 俺と天地さんは」
「う、うん」
「なら問題ないよ。もしも天地さんに対して酷い噂が流れるなら、俺がなんとかするから。大丈夫。天地さんはなにも心配しないで」
「で、も……それじゃあ」
それじゃあ西名くんの分が悪くなるよ?――と紡ぐ前に、優の手が伸びて唇に触れた。細長い人差し指はすぐに離れて、何事もなかったかのように握りしめられる。
「約束。俺が守るから」
「に、西名、くん……」
耳まで赤く色づく時雨は、恥ずかしさに顔を俯かせた。
「うわ、空気甘いわー」
「晴っ! 空気読みなさいよ!」
全力で千恵に足を踏まれた晴樹はイスごと飛び退き、痛みに顔を歪ませた。
「いってぇ! 千恵たん痛い!」
「バカ晴っ。たんづけしないでって言ってるでしょ! 次たんづけしたら口聞かないから」
「マジでか!? それは困るわー。解った。気をつけるから。――だから許して、千恵」
大袈裟に驚いた後の真面目な顔。振り幅の大きいギャップだが、千恵は驚く替わりにため息を吐いた。
「ったく……。しょうがないから許してあげる」
「さすが千恵た――……千恵は話が解るなぁ」
「いま言いかけたけど、聞かなかったことにするから。その替わり、ちゃんとしなさいよ?」
千恵がにっこりと笑いながら言えば、晴樹は「おうよ」と大きく頷いた。
優は時雨を眺めて、時雨は二人のやり取りを眺めながら食事を進めていた。時雨ひとりがなにも知らないことなど知らずに――。
◇◆◇◆◇◆
他愛もない話をしながらの昼休みを終え、午後の授業も難なく終えた放課後。帰りのHRが終われば、ひとりふたりと帰宅や部活へと行く為にさっさと教室を後にし、時雨たちも帰る支度を整えた矢先のこと。閉まっていたドアが静かに開いた。
「天地さん、帰ろう?」
「あ、西名くん」
「あのさ、天地さん。今日よかったら一緒に帰らない? 確か帰宅部だったよね?」
「帰るのはいいけど。……でも、西名くんに変な噂がたたない?」
「俺は天地さんとなら、どんな噂がたっても構わないよ」
「……え?」
ふたたび目を見張る時雨に、優は小さく笑みをこぼす。
「だって、付き合ってるんだよね? 俺と天地さんは」
「う、うん」
「なら問題ないよ。もしも天地さんに対して酷い噂が流れるなら、俺がなんとかするから。大丈夫。天地さんはなにも心配しないで」
「で、も……それじゃあ」
それじゃあ西名くんの分が悪くなるよ?――と紡ぐ前に、優の手が伸びて唇に触れた。細長い人差し指はすぐに離れて、何事もなかったかのように握りしめられる。
「約束。俺が守るから」
「に、西名、くん……」
耳まで赤く色づく時雨は、恥ずかしさに顔を俯かせた。
「うわ、空気甘いわー」
「晴っ! 空気読みなさいよ!」
全力で千恵に足を踏まれた晴樹はイスごと飛び退き、痛みに顔を歪ませた。
「いってぇ! 千恵たん痛い!」
「バカ晴っ。たんづけしないでって言ってるでしょ! 次たんづけしたら口聞かないから」
「マジでか!? それは困るわー。解った。気をつけるから。――だから許して、千恵」
大袈裟に驚いた後の真面目な顔。振り幅の大きいギャップだが、千恵は驚く替わりにため息を吐いた。
「ったく……。しょうがないから許してあげる」
「さすが千恵た――……千恵は話が解るなぁ」
「いま言いかけたけど、聞かなかったことにするから。その替わり、ちゃんとしなさいよ?」
千恵がにっこりと笑いながら言えば、晴樹は「おうよ」と大きく頷いた。
優は時雨を眺めて、時雨は二人のやり取りを眺めながら食事を進めていた。時雨ひとりがなにも知らないことなど知らずに――。
◇◆◇◆◇◆
他愛もない話をしながらの昼休みを終え、午後の授業も難なく終えた放課後。帰りのHRが終われば、ひとりふたりと帰宅や部活へと行く為にさっさと教室を後にし、時雨たちも帰る支度を整えた矢先のこと。閉まっていたドアが静かに開いた。
「天地さん、帰ろう?」
「あ、西名くん」


