「そういえば!上原さん貧血なったこと  
  ある?」
不意に聞かれたこの質問。これが私の運命を変える言葉だったなんて私は知りもしなかった。

 「貧血は、ないです。」
 「ないのか〜ちょっと血圧はからさし 
  て?」
 「はーい」
腕になんか巻いて、どんどん膨らんできゅううと腕を締め付けられる。
どくどくと心臓の音が聞こえた気がした。
 「んー。ふつうか。今度立って~!」
そう言われて立った。すると記憶を失う前のあの感覚が襲う。
また、だ。
怖い。
 「上原さんっ1回座って!」
 「は、はい…」
 「えっ…?」
血圧をはかり終えた先生がいつもと違う声を出した。
 「先生?」
 「上原さん。もしかしたらだよ?もしか
  したら…起立性調節障害かもしれ
  な……」  
 「起立性…調節障害?」
 「うん。」
起立性調節障害。突然の長い病名。
私は怖くてたまらなかった。
 「先生、そういえば、佐々本は?」
 「あれ?いないわね。どこ行ったのかし
 ら。」
いつの間にかいなくなった佐々本より私は長い病名にしか気を取られていなかった。