『隣の芝生は青い』
とは、よく言ったものだ。
人はなぜ、自分以外の所有物が、輝いてみえるのだろうか。
例え、それが実際はそれほどの価値が無くても。
人は、他人の物を欲しがってしまう。
永遠にそういう生き物なのだろうか。
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「またこの季節か……」
ハア――
俺は、ため息混じりにエントリー表を眺めながら、髪をかきむしった。
そう。
今週はあのイベント。
『全参加型・選抜総選挙』
毎年例外なく盛り上がる、この一大催しが行われる。
まあ、簡単に言うと、人気投票だ。
そう。
俺たちには、それぞれ、『押しメン』と呼ばれる、自分が最も大好きで、もっと人気になってほしいメンバーがいる。
ちなみに俺は、ずっと変わらず、同じメンバーを押し続けている。
あぁ。
今でもはっきりと脳裏に焼き付いている。
味わったことのない感動――
自然に涙がこぼれ落ちるような感覚――
初めて出会った時は、それほど衝撃的な大事件だった。
美しい。
とにかく美しい。
その一言だった。
俺は一目見たその時から、心を奪われ、ずっとそのメンバーを押し続けていた。

