『隣の芝生は青い』



とは、よく言ったものだ。

人はなぜ、自分以外の所有物が、輝いてみえるのだろうか。

例え、それが実際はそれほどの価値が無くても。

人は、他人の物を欲しがってしまう。

永遠にそういう生き物なのだろうか。


*****


「またこの季節か……」


ハア――


俺は、ため息混じりにエントリー表を眺めながら、髪をかきむしった。

そう。

今週はあのイベント。


『全参加型・選抜総選挙』

毎年例外なく盛り上がる、この一大催しが行われる。

まあ、簡単に言うと、人気投票だ。

そう。

俺たちには、それぞれ、『押しメン』と呼ばれる、自分が最も大好きで、もっと人気になってほしいメンバーがいる。

ちなみに俺は、ずっと変わらず、同じメンバーを押し続けている。

あぁ。

今でもはっきりと脳裏に焼き付いている。


味わったことのない感動――

自然に涙がこぼれ落ちるような感覚――


初めて出会った時は、それほど衝撃的な大事件だった。

美しい。

とにかく美しい。

その一言だった。


俺は一目見たその時から、心を奪われ、ずっとそのメンバーを押し続けていた。