2人そろって、すっかり闇に染まった空を見上げる。
星なんて一つも見えなかった。
今の俺にはそんなことはどうでもよくて。
先ほどのキスの興奮が冷めないままだった。
感触も、るかの手の柔らかさも、匂いも…全部鮮明に残っている。
それ以上のことだってもう他の女と済ませてあるのに、
そんな行為など比にならないほど体が熱かった。
肩が触れあうか、触れあわないか―――そんな絶妙な距離に、彼女はいる。
俺の心臓はドキドキしているけれど、るかのほうはどうなのだろう?
ふと盗み見た彼女の横顔はそこはかとなく微笑んでいて。
「なに。何か嬉しいことでもあったのかよ」
整った横顔に聞いてみる。
「あれ、分かっちゃった?」
上のほうを見上げたまま、唇はさっきよりも深く、弧を描いた。
「何だよ?」
彼女の感じる嬉しいこととは何なのだろう。
なかなか自分のことは言わない彼女のことで、知っていることは少ない。
例えば、性別が女であること
黒髪が綺麗なこと…笑顔が可愛いこと…それくらいしか知らない。
それくらいしか、教えてくれないのだ。
答えてはくれないだろうな、とダメもとで聞いてみたのだが、
今日のるかはいつもよりもご機嫌だったようで。
「やっと見つけたの」
ぽつりとつぶやいた。
「…?」
「ずっと探してたものを、やっと見つけたのよ」
「ふうん?」
「ここからは、秘密。聞いても答えないからね」
「はぁ?ケチだな」
「ふふ、なんとでも言いなさいよ」
よいしょ、と彼女が持たれていた壁から背を離し、
俺の前へと躍り出る。
ついでに足元に置いてあったカバンも持って。
「そろそろ帰るわ」
時計を確認すれば、もう20時になろうとしているところだった。
時間が経つのが早い。
「おう、気を付けろよ」
「うん。…あ、そうだ」
るかが校門のほうへ足を向けたとき、ふと思い出したように俺を振り返った。
「今度一条くんにお願い事をするかもしれないから」
その時はよろしくね、といじわるな笑顔を残して、暗闇へ溶け込んでいった。
お前の頼みならなんだってするって、決めてるんだ。
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