女は俺の上に覆いかぶさり、何度も何度も角度を変えてへたくそなキスを俺に与える。

でも、俺は抵抗したりしない。

瞼には、あいつの姿が鮮明に映っているから…。

「ん、ふ…ッ」

厭らしい水音。

俺の下半身に擦りつけられるアバズレのアソコ。

寝起きざまに発情してんじゃねーよ。

「もう、いいだろ…降りろよ…」

がっつく女を制してキスを止める。

それと同時くらいのタイミングでクラブのドアが開かれた。

そこには全身黒ずくめの、オーナーが立っていて。

俺は女を強引に押しのけ、慌てて起き上がる。

「よぉ、昨日も新規の客連れ込んでお楽しみだったみてーだな?」

俺よりも大分年上のオーナー。

その目は、明らかにカタギではないことを物語っている。

「う、ういっス…新規3名、契約書に判子ももらいましたし、良い金稼ぎになりますよ」

「ほー。バカなわりによくやってんじゃねーか。やっぱ顔か?世の中顔なのか?」

「い、いや…」

オーナーは高そうな革靴を鳴らし、ゆっくりと俺のいるところへ近づいてくる。

俺に押しのけられた女はいまだに床に座ったままだったが、

オーナーはその女を容赦なく蹴飛ばし、俺の隣へと腰を下ろした。

女は蹴られた衝撃で壁に背中をしたたかに打ち付け、うめいていた。

「今回はいーこいーこしてやる。次も頼んだぞ、龍雅ちゃん?」

「は、はい…」

オーナーが笑う。

でも、目は…目だけはごまかせない。

目が、へまは許さないとすごんでいた。

俺は裏社会とも繋がっている不良グループの一員だ。

そのつながりでこのクラブにもよく通っていて、オーナーとも仲良くなった。

オーナーは裏社会の人間で、彼の組がシノギのために経営しているクラブだった。

女が男を喜ばせるための場所。

法なんてものはこの場所に存在しない。

なんでもあり、何でも許される。

俺はバカな女をそういう世界へ引きずり込み、おぼれさせるのが仕事。

女なんてちょっと良い顔をすれば、簡単に落ちる。

なんて醜いんだろう。