「私やっぱり帰……っ」
「璃子お願いよっ、今日だけでいいから付き合ってちょうだい!どうしても嫌ならこの先会わなきゃいい話しでしょ?ね?お願い!今回は我慢してくれない?お母さんの顔を潰さないでちょうだいよ」
「…っ……」
母が切羽詰まった表情で璃子の腕を掴んでくる。
最後まで抵抗しようと思った璃子だったが、その姿は今まで見たことがないほど必死で、思わずたじろいでしまうほど。
はぁ、もう嫌だ…
そう思いつつも、璃子はこの状況で何を言ってもどうあがこうが、もはや逃げ場なんて何処にもないことを悟った。
前方から歩いてくる品の良さそうな貴婦人を目にした時、もうここは諦めなきゃいけないんだと、璃子はガックリと肩の力を落とす。
「あ、華ちゃん、こっちこっち」
「ああ、良かった。美加ちゃんごめんなさいね、少し時間をオーバーしちゃったかしら?」
「いいのよ、私達も今来たところだから。今日はこうして会えてとても光栄だわ」
「本当ね」
母が小声で「ね?」と観念しなさいというような視線を向けてくる。
璃子はそんな母に心底怒りを覚えながらも、
「今回だけだからね」と小声で呟くと、思いっきりしかめっ面を向けてやった。



