だけどそれは甘かった。
そんな璃子の期待を一瞬にして壊したのは、やっぱり目の前の母の一言だった。
「あ、でもその人はどんな人なの?仕事は?何してる人?」
喜んだのも束の間。すぐさま投げ掛けられたその言葉に璃子はまた先程の緊張感を復活させた。
や、やっぱり聞くよね?
ついにきたこの質問。
絶対に聞かれるとは思っていたけれど、いよいよ確信をついてきた母に単純じゃない。そう簡単に話が円満に終わらないことを璃子は何となく悟った。
「あー……」
「何よ。もったいつけないで教えなさいよ」
「…それが……」
さぁ、なんて言おうか。この母に承諾を得られるよう、どう説明するべきか。璃子は今までないぐらいの思考を働かせ、自分なりに必死に考えた。そして…、ようやく出た言葉がとてもありふれたものだった。
「同じ職場の人…、かな」
悲しいかな、これしか思いつかなかった。
自分でも情けない。もっと他にベストな言い方があったかも知れないが、それでも決して嘘はついてない。
間違ったことも言ってないつもりだ。
ただ、同じ職場の上司ってだけで、副社長ってことを除けば何も問題はないわけだから。



