「私、ここのバームクーヘン一度食べてみたかったんです!」
「それは良かった」
嬉しそうな璃子を見て、水嶋も柔らかく目を細める。
水嶋はこんな風に無邪気に笑う璃子の笑顔が好きだった。
だからそんな顔見たさに、「仁科さんの喜ぶ顔が見たいんです」なんてことを言い、
度々こんな風に璃子にオススメな食べ物をプレゼントしては璃子の興味を引いていた。
「あっ、せっかくなんで、良かったらうちで今から一緒に食べませんか?」
そんな無邪気な璃子の言葉に水嶋は少し驚いた。
璃子はというと、何の迷いもなく、今思ったことをただ口に出しただけだった。
だって一人で食べるより、水嶋さんと一緒に食べた方が断然美味しく思えるに決まってるもん。
そう思い、純粋な気持ちで声をかけたつもりだったけれど、返ってきた水嶋の反応は予想外に困り果てたものだった。
「せっかくのお誘いは嬉しいんですが、今日はやめておきます」
「えっ?」
「ダメですよ。こんな夜遅くに男性を部屋の中に入れたりしちゃ。僕が途中で帰りたくないって言いだしたらあなたはどうするんですか?」



