それを見た瞬間、璃子はこの前母に言われた言葉を思いだし、顔の火照りが急激に冷えていく。
やっぱり私は副社長とは付き合えない。
付き合ってはいけないんだ、と。
LINEから繋がる母の姿と一緒に今までの母の苦労を急に思いだしてしまった。だから璃子はたまらず下唇を噛み締めた。
そうなると決断は早かった。
璃子は電話を終え、再び向かいに座り直した水嶋に今までの葛藤を振り切るよう、勢いよく頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!!」
これには当然水嶋も驚きを隠せない。
彼のビックリした表情に気付きながらも、あえて気にしないよう慎重に言葉を選んでいくのが今の璃子の精一杯。
「ふ、副社長の気持ちはすごく嬉しいです。嬉しいんですけど、やっぱり私はあなたとはお付き合いできません!」
この決断に至るまで、どれだけの日数がかかっただろう。
悩んでも悩んでも答えが出なかった。
だけどそれは自分の気持ちに反したもので、
疼きだす心の傷みは嘘の代償。
それをズキズキと感じながらも璃子は水嶋に向かって深々と頭を下げる。



