「い、今お茶入れますのでその辺に座っててください!」
ほっとしたのも束の間、すぐに言葉に言い表せないほどの緊張感が璃子に襲いかかってくる。
どうしよう、
つい、勢いで中に入れてしまった。
しかもあの副社長を、ずっと悩み、ずっと会いたかったあの水嶋を、だ。
ヤバイ、ドキドキする。
心拍数が尋常じゃない。
璃子はお茶を用意する振りをして、そっと深呼吸を繰り返す。
が、水嶋が視界に入ればそんなことはただの気休めにすぎず、ただただ落ち着きを無くしていく。
「えっと、こんなものしかないですけど、お、お茶を…」
「ありがとうございます。ここが仁科さんのお部屋ですか。なんとも可愛らしいですね」
「へ?あ、ありがとうございます。けどそんなに女の子らしい感じではないと思いますけどね」
アハハ…、と璃子は渇いた声をこぼす。
いたってシンプルなアパートの一室。
カーテンやカーペットはナチュラルなベージュやグリーンで統一してあるだけだし、家具もそれほどこだわって置いてある訳ではない。
唯一女の子らしいと言えば、姉がふらっと遊びに来たときに「お土産」と言って勝手に置いてった香水の数々だけだと思うし。



