「分かっています…」
璃子は息が詰まりそうな感覚を覚えながらも一言そう呟いた。
私だってそんなにバカじゃない。
それぐらい言われなくたって分かってる。
水嶋が副社長と知った時、心の奥できっとこの恋は順調には進まないだろうと思い始めていた。
私と水嶋さんとでは釣り合わない。
璃子の脳裏には真っ先にそんなことが浮かんでいた。
「もちろん副社長のお邪魔にならないよう、この先も接していきたいと思います。良き友人として…」
言いながら少し鼻の奥がつーんとした。
目頭の奥がじわりと熱をもってくる。
久しぶりの感覚だった。そして恋。
何年かのぶりのトキメキ、そして学生時代にも味わったことのない優しくて楽しい時間を無くしてしまった瞬間だった。
秘書が背を向けて帰ろうとした瞬間、璃子はたまらず今発言した自分の言葉を撤回しそうになった。
彼が好きで、彼の思いを受け止めたい、と…
それでも、璃子にはこれ以上水嶋に進めない理由があった。
それは璃子の家族であり、実の姉の存在が深く関係しており、璃子自身の深いトラウマのようなものがあるからだ。



