その頃から家族というものが分からなくなった。
お互い好きで結婚したはずなのに、両親はそれぞれ他に好きな人がいた。
そんな環境の中で私は結婚というものの憧れが少しづつ、少しづつ崩れていった。
そしてそれから中嶋さんと会うことは一度だってなかったのだけど…
「これが真実です。黙っててごめんなさい。別に隠すつもりはなかったんですけど、気軽に話せる勇気もなくて…。本当のことを言って先生に軽蔑されるのが怖かったんです」
「軽蔑なんてしないよ」
ここでようやく黙って話を聞いていた先生が声を上げた。
弱々しく顔を合わせると、彼はとても優しげな表情をして私の手を握る。
「むしろちゃんと話してくれてありがとう。逆に俺の方こそごめん。大人げない嫉妬なんかをしたせいで未来ちゃんに嫌なことを思いをさせちゃって」
「いえ…、私の方こそごめんなさい。先生を不安にさせてるとは思わなくて」
「いや、俺が悪いよ。情けないね。少し前未来ちゃんが中嶋さんの名刺を握りしめて眠ってるのを見たら急に焦りを覚えて。その時からどことなく未来ちゃんの様子も少しおかしかったから」
「じゃあ、やっぱりあの名刺は先生が……?」
「……ん、俺が持ってる。気づいたら未来ちゃんの手から奪い取ってた」



