「そして母が亡くなってすぐ、私を見捨てて父は出ていきました」
「それって……」
「私は実の父親から捨てられたんです」
話を聞いた先生は驚きながらも私をソファーへと誘導した。きっと簡単に終わる話じゃないんだと悟ったからだろう。
私の手を繋ぎ隣に座る素振りを見せ、ちゃんと受け止めようとしてくれる。
「その時に心配して何かと気にかけてくれたのも中嶋さんで…」
母が亡くなった後も一人になった私を気にかけてくれた中嶋さんは良かったら一緒に暮らそうか。とまで言ってくれた。実の父の軽薄さも知っていたし、私の母からもしもの時は未来をよろしくと頼まれてたらしい。
「今思えば中嶋さんは他人だけど、実の父より父親らしくしてくれた人でした」
なのに、私はそれに応えることはしなかった。
どうしても受け入れることが出来なかった。
中嶋さんがどんなにいい人でも胸の中にくすぶるわだかまりを拭うことは出来なかった。
だって大人が嫌いだったから。
その時の私はお互い好き勝手に生きる両親。身勝手な大人達が心の中では許せなかった。
だから私は差し出された手を掴むことはしなかった。
むしろ離れたいとさえ思い、私は祖母の家に行くことを決めた。



