「ほ、本当に違うんです。彼とはそういうのじゃなくて……」
先生の顔を見ていたら急に泣きそうになってきた。
それぐらい先生は辛そうな顔をしてる。私は今先生に悲しい思いをさせているのだと思った。
もう言えばいい。
ちゃんと話さなきゃ。
例えそれで先生に軽蔑されたとしてもしょうがない。
この先何も言わないよりはずっといい。
そう思ったらこのまままじゃいけない。何とか誤解を解きたくなり、覚悟を決め先生を真っ向から見つめた。
「か、彼は……」
正直話すのは怖い。けどこのまま先生と仲違いして彼を失うことの方がもっと怖い。
「正直に…話します。中嶋さんは私の、亡くなった母の愛人だった人です」
伝えた直後脳裏に昔の思い出が甦ってくる。
そう、彼は私ではない。母の愛人だった人だ。
思わず俯いた私に先生の驚いた視線を感じたけれど、グッと唇を噛み締める。
「……え?」
「彼は私ではなく、母を愛してました」
彼と母はとても相思相愛だった。
幼い頃、小学生だった私でもそれはちゃんと伝わっていた。
例えそれが道ならぬ恋だったとしても、二人はとても愛し合っていた。
その記憶が鮮明に蘇り、辛い過去が私の心を支配する。



