ーーその夜、家に帰った私は一人ソファーに座りため息を吐いた。
夕御飯を作ったものの、あまり食べる気になれず半分ほど残してしまった。
できれば会いたくはなかったな。
どうしてこのタイミングで会ってしまったのだろう…
名刺を見つめながらゴロンと横になった。
せっかく忘れかけてた嫌な記憶が甦ってきそうでぐっと目をつむる。
「ーーそうだ。何か困ったことがあれば連絡して?ここで会ったのも何かの縁だ。君のことはどうしてもほっとける気がしない」
あの後、中嶋さんはそんな言葉をかけて私の頭を撫でた。
困った表情を向ける私に彼は昔と変わらない優しい目を向けた。
何も変わってない。そう思った。
外見こそ年を重ねたものの、中身は何も変わっていない。
あの頃のまま。人の良さが滲みでてると思った。
けれど、私は中嶋さんの好意を受けとることはできない。
それは過去も同じ、この先だって彼に頼るつもりはないと決めている。
ーーガチャ…
「……未来ちゃん?」
そして気付けなかった。
この日、私はいつの間にかソファーで寝てしまった。
先生がいつ頃帰ってきたのか。
そっと頬を撫でられる感じがして、珍しく幼い頃の夢を見た。
ぎゅっと名刺を握りしめたまま、夢の奥に沈み込んでいく。
この時、彼がどんな表情で私を見ていたのかも知らず、とても深い眠りに就いていた。



