悪いと思いつつ複雑な表情まで向けてしまった。
世間は広いようで狭い…
それを実感させられたようで、何となく気分が沈んでいく。
その後思い立ったように名刺を見せられて、彼が某有名製薬会社の社長さんだということが分かった。
「……えっ、中嶋さん社長さんだったんですか?」
「まぁ肩書きはね。名ばかりでそんなに大したものじゃないよ」
これには驚いたけど、以前の私にそんなことを知るよしはなく、気にもとめていなかった。
当たり前だ。もう何年前だろう?確かかれこれ…
「でも元気そうで良かった。ちゃんと生きててくれて安心したよ」
懐かしむ台詞の中に、えっと驚く言葉があった。
一瞬言葉につまり、中嶋さんを一点に見つめてしまったけれど、彼の表情には納得するものがあった。
「おかげ様で……。なんとか生きてますよ」
「なら良かった。ずっと心配してたんだ。あのまま一人にして本当に良かったのかって」
その言葉に遥か昔の記憶が舞い戻ってくる。
心配そうな顔を向けてくる中嶋さん。
けっして嬉しいと言えない切ない過去だけど、この人はそれを知っている。
苦い過去を全部知っている人だからこそ、会いたくはなかった。
このまま会えずにいたら良かったのに…



