「兄妹は……いません」
「あら、一人っ子?」
「はい。ちなみに両親もいません。小学生の時二人とも死に別れました」
誰とも目を合わせず、目の前のビールだけに視線を止めた。
冷静に淡々と言えたのはいいのだけど、少し声が固くなってしまった。
変な風に思われてないだろうか?
あまりこういった話は好きじゃない。
嫌な記憶が甦ってきそうだから。
母親とは病気で死に別れたのは事実だが、父親は違う。
まだ何処かで生きている。
父は愛人を作り出て行った。
それは母が亡くなってすぐの頃。
元々父親との折り合いが悪かった私はその事実がトラウマになり、無かったことにした方が楽だった。
わざわざばか正直にいう必要はない。
いっそ二人とも病死にした方が適当な理由になり、受け答えするのが楽だった。
「あらそう…、あなたもけっこう苦労したのねぇ」
「もう、過ぎた話です。その後暫く祖母や親戚の家でお世話になっていたおかげでしょうか。色々家事全般鍛えらたので今となっては良かったと思います」
「ああそっか。だから未来ちゃんはあんなに料理が上手いんだね」
ここで納得したように先生が頷いた。
さっきから先生の射るような視線に気付いてたけど、こうして目を合わせてみるといつもと変わらない。とても穏やかな顔だった。



