そして今、私は穏やかだった水面に陰風で乱されたような気分でいる。
先生が言っていた嫌な気分とはこういうことだったのだろうか?
二人が初めて一緒にいるのを見た瞬間、言葉にならない不安が押し寄せた。
もしあの時、私がちゃんと先生に気持ちを伝えていたら少しは今の心境も違っていたのだろうか?
そう思ってももう遅い。
私はただ怖い。
そんな事実から避けるよう先生達を視界から外し、冷静を取り繕う。
それからほどなくして噂は瞬く間に広がった。
謎の美女が元奥さんだってこと。
名前は三島茜(みしまあかね)さんと言って、秀先生より2才ほど年上なこと。
アメリカの有名病院からの勤務を終え帰国し、暫くの間秀先生のこの病院で臨時の勤務医として働くことになったこと。
どうしてこの期に突然帰国したのは誰も分からないみたいだけど、病院内がざわざわと騒がしいことになったのは見ての通り間違いはなく。
「ねー、あの二人ってもしかして元サヤの可能性大なわけ?」
「まじで?それはないでしょ?」
「だってさ、先生って今まで恋愛の浮わついた話とかなかったじゃない。それってもしかして別れた奥さんのことが忘れられなかったんじゃないの?」
三島先生が来て1週間、色んな噂が飛び交った。
特にこのての話題が多かった。
……が、実際本当のことを知ってる人は誰一人いない。
昼休み、先輩看護婦さん達とお昼を食べながら会話を右から左へと受け流していく。



