「このまま一緒に見て回ろうか?」
そう言われ頷く以外の選択技はなく、私は広すぎる部屋を彼と順々に見て回った。
この時、私の思考から"帰る"という考えはどこかに消え去っていた。
きっとすでに先生の思惑通り。舞い上がる私は彼の見えないしたたかな糸にまんまと引き寄せられ、捕らわれていたのかもしれない。
そして極めつけバルコニー。外を見渡せば、先程自分達が遊んでいたパーク内が一望でき、さらに感動は増す。
「本当、夢みたい……」
「良かったね」
その笑顔は反則です。
先生が私以上に嬉しそうな表情をするからやたら胸が騒がしい。
心臓が跳び跳ねて、向けられる視線にも熱がこもる。
「未来ちゃんの最高の思い出になれば俺も嬉しいよ。今日は俺も楽しかったから」
見つめ合ったまま動けずにいると、すっと先生の手が頬に伸びてきた。
「どうかな?少しは俺のこと好意的に見てくれた?未来ちゃんが望むならまたここに何度でも連れてきてあげる。なんならこれから順番にホテル内の部屋を制覇する?そういうのも楽しそうでありだよね」
言うことがもはやセレブ級だ。
さすがお医者様。言うこともやることも大胆すぎる。
目を見開き圧倒されっぱなしだったけれど、それでも視線を反らせなかったのは、現に今目の前の彼がかっこいいと思ったから。概に惹かれていることに気付いてしまったからだ。
それを嬉しいと認識し、先生から目を反らせない自分にドキドキした。



