もしかしたら陽生達に遠慮して中に入れないのかもしれない。
個室とはいえ夫婦の邪魔をしちゃいけないと。
よく見れば表情に疲れが滲み出ている。
当たり前だ。昨日から彼女はずっと付きっきりで果歩ちゃんのサポートをしていたんだから。
「良かったら使う?」
そう言った俺に未来ちゃんは一瞬考える素振りを見せたものの、首をやんわり横に振った。
「それより一つお願いが…」
彼女は産まれたばかりの赤ちゃんが見たいと言った。
それに了承した俺は彼女を新生児室の前まで連れていく。
そこは全面ガラス張りになっていて、産まれたばかりの赤ちゃん達の姿ををずらりと拝見できるようになっていた。
「うわっ、可愛い」
「ほら、あそこ。ちょうど右側の手前にいるのが果歩ちゃん達の子だよ」
「本当だ。椎名ベイビーって書いてある。なんだかさっきよりも少し顔色が変わりましたね」
彼女は興奮ぎみに食い入るように見る。
「あ、欠伸した、可愛い」とはしゃぎながら顔をとろけそうなほど緩ませる。
「本当可愛い……」
そして彼女はまた泣いていた。
無意識なんだろうか?ポロリ、頬を伝う涙を見つめながら、俺はそんな彼女の表情に目を奪われる。
とても綺麗だと思った。
「…未来ちゃ……」
「先生ありがとう」
突然言葉を遮るよう涙いっぱいの瞳がこちらに向き、俺はドキッとして身構える。
「こうして三月さんの赤ちゃんを無事に見ることができたのも全部先生のおかげてす。もう何て言ったらいいか……。本当にありがとう。先生大好き!」



