その男のひどい扱いに酷い憤りを感じたが、それと同時にどこかホッとしている自分がいた。
それが何の安堵なのか分からないまま、ここでようやく俺は彼女の頭にそっと触れた。
「そんな奴別れて正解だよ」
触れた髪の毛の触感を確かめながら、やわらかに撫でる。
彼と別れた今、これぐらいなら…と。
猫毛で柔らかな髪。それが妙に気持ちよくて何度も上下した。
「よく頑張ったね」
最後お前には本気になれないと言われた彼女は彼の携帯を奪い、アパートのベランダから勢いよく捨てたらしい。
それが普段おっとりとした彼女らしくない行動で驚いたけれど、それぐらいやっても十分だろう。
「そんな男未来ちゃんに触れる資格もない。そいつはきっとろくな死にかたしないかもね」
俺もまた友達として、妹みたいな存在の彼女を強く傷付けられたという苛立ちが勝り、庇うよう強い口調になる。
彼女が俺を見て目を見開く。
「きっと近い将来痛い目にでも合うんじゃない?最悪恨みをかって刺されるとか」
そしてぷっと口元を緩める表情が目にとまる。
次第に泣き笑いを見せてくれたことに強い喜びを感じた俺はこの時、未来ちゃんの笑顔がなにより可愛いと思い始めていた。
だけどそれは友達としてだということを忘れちゃいけない。
そう言い聞かせてた俺はきっとこの時すでに未来ちゃんに惹かれていた。
それに気づくのはもう少し先。
彼女のまばゆいばかりの笑顔と涙をもう一度見た時、俺は彼女への気持ちにはっきりと気付くことになる。



