そして彼女との距離感が変わったのは果歩ちゃんの妊娠と出産だった。
複雑な家庭環境で育った果歩ちゃんの為に自分が親代わりとして彼女の支えになると決意したらしい未来ちゃんはある日、俺の勤務する病院までやってきた。
ちょうどその日は午後の診療を終え、少し一段落をしたところだった。
「あの、皆川先生いますか?」
受付でそう話している姿をちょうど出くわした俺は不意に足を止めた。
何か思い詰めたような顔をしている彼女は間違いなく顔見知りの未来ちゃんだった。
俺は不思議に思いながらもすぐさま声をかけ、俺専用の休憩室へと連れていった。
院長室の隣が俺の自由にできる部屋。
両親がこの産婦人科の経営者のため、長男の俺は自動的に副院長という肩書きだった。
「どうしたの?俺に何か用事?」
彼女をソファに座らせると、俺は患者に向けるような笑みを向けた。
この時まだお互いをよく知らない。
無意識にそういう態度になっていた。
「あの…、先生に折り入って相談したいことが…」
ぎこちなく俺と目を合わせた彼女が何を思ったのか、次の瞬間唐突にガバッと頭を下げた。
「お願いがあります!」
「……うん?」
内心ビックリしたものの、俺はなるべく表情に出さず未来ちゃんの次の言葉を待った。



