「泣いてもいいよ。俺の前でならいくらでも」
行動とは裏腹に、先生の声はとても優しい。
それに感化されるように私はうっと涙を落とす。
「だけどこれからは俺の前だけにして。他の男の前でそんな顔見せないで」
「せんせ……」
「好きなんだ。もう誰にも渡したくない。ゆっくりでいい、これからは俺のことを考えて?」
優しく頭のうしろを撫でられて、感情が高揚する。
けっして嫌な訳じゃない。
だけど素直に頷けない臆病な自分がいる。
この日、私がした選択はあっていたのだろうか。
それがわからないまま、先生の優しさに流され、甘えてしまった私はきっとずるい。
だけど不思議とこの腕の中から出たいとは思わなかった。
「なるようになってみたら?」
三月さんの言葉が思い浮かんでは消える。
一歩前に…
何かを変えてみたい。
そう思った私に少しの希望を。
彼なら変えてくれるのかもしれない。
そんな思いの中、私は彼の運転する車に乗り込んだ。



