熱を持った瞳に見つめられて、何も言葉にできなかった。
先生の本気が伝わって、苦しいのと切なさが混じり合うような感覚になる。
感じたことのないドキドキが体の中をせり上がってくる。
「……はっ、随分余裕ですね。それが大人の余裕ですか?」
ドキリと心臓が跳び跳ねる。
雅也の呟きにやっと先生の視線が逸れた。
「余裕なんてないよ。これでも必死なんだ。俺も一度は失敗してる身だしね。今まで学んだことを実行してるだけ」
「それって…」
「悪いけど君には感謝してるよ。こうして未来ちゃんを裏切ってくれなかったら、俺は今も安定した友達のままの位地にとどまっていたかもしれない。
素直に動けなかったかもしれないからね」
再びぎゅっと手を握り込まれると顔がぼぁっと熱くなった。
まるで離さない、そう言われてるようで。
「未来ちゃんはこのまま俺が貰ってく。君にはもう返さない」
「ーーー」
雅也が息を呑むのが分かった。
そして私も何も言葉にできず、先生の横顔を一点に見つめる。
「君も何でこうなったのか、もう一度しっかり自分を見つめ直すといい。ほら、行くよ」
そう言われ、私はハッとして身動きをした。
震える足でどうにか靴を履き終えると、素早く先生の手が私のスーツケースを奪い取る。



