やっぱり目をそらしてしまった私に、先生は特に気にする様子もなく緩やかに笑ったけど、私はドキリと表情を固くした。
だって先生の手が私の手を上からそっと包んだから…
「何度も聞いて悪いけど、もう一度だけ確認しておいてもいいかな?」
躊躇いつつ、無言のまま顔を上げた。
「彼のことはもう何とも思ってないんだよね?ちゃんと別れたいと思ってる?」
「………」
真剣な瞳に飲み込まれそうだったけれど、少しの間をおいて「はい」と頷いた。
雅也のことは好きだった。
この一年を振り返ると、それなりに楽しい日々ではあったけれど、きっとこの先も一緒にいる相手じゃない。
この前の話し合いでそれはよく分かった。
私達はもしやり直したとしてもたぶん上手くいかないだろう。
直感的にそう思った私はきっと間違ってない。
「じゃあ、大丈夫だね。俺も覚悟を決めた。ちゃんとけじめをつけに行こう」
先生がシートベルトを外すからドキッとした。
それって…
今から雅也に対して何かするってことなのだろうか?
やっぱり先生は彼に会うつもりなの?
それを確信するように先生が車を降り、続いてドアを開けた私の手をエスコートするように掴みアパートの階段を堂々と上っていく。



