「残りはアパートに置いてあるので」
「ああ」
ふう…と息を吐くと、隣で同じように先生もハンドルに両腕を付き、肩の力を抜くような動作をした。
「とりあえず第一関門は突破だな」
「……え?」
「何気に緊張したかも。けっこう力入っちゃったよ」
意外な言葉に思わず首を傾ける。
きっとぽけっとした顔だ。
「ほらさ、まずは果步ちゃんをこっちの味方につけておかないとね。彼女だけは怒らせたら怖いし」
「えっ……」
「まぁ、これでひと安心かな。何て言うか未来ちゃんのご両親に了承を得た気分だよ」
そんなことを言うもんだから私は目を真ん丸にした。
そこまでの覚悟だったの?
私が気付けなかっただけで、先生だって内心は同じようにピンと何か張り詰めていたものがあったのかなって。
そう思うと何だかよく分からない、生温い感情が込み上げてきそうだったけれど、
でも、彼の言うことはあながち間違いじゃない。
小学生の時に両親を無くした私には肉親と呼べるものがいない。独りっ子だった為、兄妹もいない。
そうなると三月さん、椎名先生は私の唯一心を許せる家族みたいなものだ。



