目の前の光景が微笑ましい。
いいなぁ。楽しそう。
お世辞じゃなく、こういう二人を見るのはすごく好きだ。
私もいつかこんな家庭を築きたいなって。
憧れの関係であり、羨ましくもあり、恋愛経験が冴えない私の唯一見本となる存在だ。
「とりあえずさ、本当に自分がどうしたいのか、どうなりたいのかをこの期にちゃんと考えてみなさいよ」
そんなやりとりにちょっぴり癒されながらも、最後に言われた三月さんの言葉が重くのし掛かった。
ーーその夜、
結局理由がわからないまま、彼女にも「一応準備だけはしといたら?」なんて即され荷造りまでさせられた。
どうして荷物をまとめなきゃいけないのかが分からなかったけれど、次の日、
本当に秀先生は宣言通り椎名家にやってきた。
いつものようにビシッと上下黒のスーツ姿できめて……、
いや、それ以上に姿勢を正した態度で私達の前に現れた時、彼の本当の思惑がはっきりと告げられた。
三月さん、椎名先生の前に立ち、深々と頭を下げる姿を見せられて、私を含め皆の表情が驚きに変わる。



