思わず椎名先生を食い入るように見た。
彼とは三月さん以上の付き合いだ。
彼女と付き合う以前から先生の病院に通っていた私は彼がどんな優れた素晴らしい人なのを知っている。
そして主治医だった彼もまた私のことをよく知っているわけで、
だからこそ、彼が今何の悪気もなく好意で言ってることもよく分かってるはずなんだけど。
親切心からの彼の優しさは今は全く逆効果。私の心臓を酷く逆撫でし、窮地へと追い込もうとする。
極度な焦りを覚えた私は顔面蒼白で口元をパクパクさせた。
「ちょっ……」
「そりゃどうも、お気遣いありがとう」
「じゃあ、ごゆっくり」
バタンと、リビングの扉が閉まる。
途端異様な静けさが二人を包み込み、私は顔面蒼白状態になる。
先生…
お願いだから戻ってきて。
そんな私の願いはむなしく、ずっと今まで避け続けてきた秀先生との魔のツーショットが出来上がってしまった。
「………」
「………」
先生が静かだから私も口を開けない。
自分から何も行動ができず、
少しの間心臓に悪い沈黙を我慢していたけれど、どうにもこうにも落ち着かない。
気持ちを誤魔化したくて、飲み干した缶ビールをテーブルに置いた時、いたたまれずその場から立ち上がろうとした。
「未来ちゃん」
だけどそれができなかったのは、
先生の手が拒むようにして阻止してきたから。
「私もそろそろ寝る準備を…」
そう言いかけた私の手をそっと上から握り締めた。



