「その代わり、後藤はちゃんと自分の気持ちに素直に向き合うこと、いい?」
ビシッと真剣な顔で指摘されて私はぎこちなく頷いた。
それを条件に私は暫く椎名家に厄介になることになったのだけど。
これが後々色々と予想外な展開を起こすことになる。
「あ、ごめん、優人(まなと)が泣いてる」
三月さんが慌てたようにベビーベッドに向かう。
すでに彼女は二児の母親だ。
3ヶ月前に産まれたばかりのほやほやな優人くん。
お昼寝から起きた彼を抱き上げる姿はもう一人前の母親で、なんだか誇らしげに思う。
(いいな…)
自分とは違い、確実に順調な人生を歩み始めてる。
そのことが嬉しいのにちょっぴり切ない。
何となく置いてかれたような感情を秘めながら、私は複雑な表情のまま気付かれないように浅いため息を吐いた。



