それから「こっちですよ」と言われ、上質なソファーに座らされると、ドキドキと緊張がまとわりついてくる。
ここはホテルの一室。
向かいに座った水嶋をまともに見ることができず、だけどもずっと下を向いたままも不自然で、チラチラと目線だけを上げると「ふっ」と水嶋がやんわりと微笑む。
「何か飲みますか?」
「いえ、何もっ」
「でも緊張してますよね?」
「………」
「僕のせいですね。驚かせちゃってすみません。でもそうですねぇ…、いったい何からどう話したらいいのやら」
水嶋が少し難しい顔して考える。
璃子はそんな様子にハラハラした気持ちでいたけれど、こんな密室に水嶋といることも想定外で、さっきから疑問ばかり浮かんでしまう。
「ていうか、ここは…」
「ああ、今日僕が泊まる部屋なんです。実は明日から大阪に出張なんですよ。ここからの方が自宅より駅からも近いので最近ちょくちょく利用するんです」
「…そう、ですか……」
戸惑いながらも納得する。
ということは明日から水嶋は東京には居ないということで、それが分かった瞬間こんな時にも関わらず、何となく寂しさを覚えてしまう。



