そんな最悪なスタートで始まったお見合いだったけれど、肝心な相手の息子さんの姿はまだどこにも見当たらなかった。
「ごめんなさいねぇ、うちの息子ったらさっき仕事が終わったみたいで、少し遅れるらしいのよ」
「あら、お仕事大変なんですねぇ。じゃあどうします?」
「先にお食事でもしちゃいましょうか。息子もそうしてほしいってさっき連絡があったから…。璃子さん、申し訳ないんだけどそれでもいいかしら?」
「…はい……」
「ありがとう」
にこり、微笑んだ笑顔がとても柔らかく印象的だ。
通称華(はな)ちゃんと呼ばれてる料理教室の先生は50代にしては驚くほど可憐で、とても母と同じ年代とは思えない。
先程軽く自己紹介を兼ねて挨拶をしたけれど、お互い華ちゃん、美加(みか)ちゃんと呼び合う姿は何だか意外で失笑。
思わず突っ込みたくなるのをぐっとこらえ、私は目の前のシャンパンに手を伸ばす。
「璃子さんは普段料理は作ったりするのかしら?」
「……いえ、残念ながら仕事が忙しいのであまり時間がなくて…、正直休みの日ぐらいしか作れないですね」
「あら、そうなの…、大変なのねぇ…」
どうせならここは家庭的じゃないことをアピールした方がいいのかもしれない。家事はあまり出来ませんって。
このままいい印象を与えなければきっと少しは幻滅してくれるよね?
璃子もその方がありがたい。



