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教室に戻ると、グラウンドで大声をだしながら練習に励んでいる野球部が目に入った。
泥にまみれた白い練習着に坊主頭。
…加賀はどこだろう。
暗いから、この大人数がいるなかで、加賀を見つけることは難しいかもしれないけど、窓を開け体を乗り出して加賀を探した。
すこし涼しさを含んだ風が頬をかすめる。
「……加賀、みっけ」
すぐにグラウンドの脇、ブルペンで投球練習をしている加賀を見つけた。
飽きるほど見てきた加賀のピッチング。
あのモーションは幼い頃から憧れの選手を真似ていたらしい、紛れもない加賀のものだ。
ホントに、スランプは脱出できたのかな…
できていたら嬉しいけど。…明日、聞いてみよう。
ふっと微笑んで、カバンを肩にかけ窓を閉めた。
…今年の夏も、来年の夏も。加賀にとって、最高の夏になりますように。