「簡単に言うと、スランプにはまった。…しかも、なかなか抜け出せない」
「スランプ…?」
加賀が…?だれよりも努力家で、人一倍頑張ってきた加賀が…?
「全然、思うように球が投げられないんだよ。ストレートでさえキャッチャーが構えたところに投げられないし、球速も変化球のキレもいまいち」
「うん。…それで?」
「なにをやってもダメで、さっき監督にーー…」
「背番号は渡せないって言われた、ってこと…?」
加賀は静かにこくりと頷いた。
眉間にシワを寄せて唇をぎゅっと噛む加賀は本当に悔しそうで。
そんな加賀を見ていると、ふっと笑ってしまった。

