「ねぇ、加賀」
「なんだよ」
呼吸困難に陥りそうなほどの胸の苦しみが外にあふれださないように、深呼吸をして一度気持ちを落ち着かせた。
ーー…ダンッ
オレンジ色の廊下に、壁にへばりつく野球部姿の男子と壁に手を当てる制服姿の女子。
お互いの距離、約15センチ。
男子は驚き顔。女子は手を強く叩きつけすぎたのか痛みに耐えようとふんばっている。
ドクドク、ドクドク。はやい鼓動はどちらのだろう。
…ミスった。強くやりすぎた。手のひらがジンジンする。
さすがにこれは予想外だった。勢いにまかせて壁ドンなんてやったのが間違いだったかな。
でもいまは、そんなことを気にしている場合じゃない。加賀に、話をさせるんだ。
…弱音、吐かせるんだ。
「加賀、あたしに、話してよ」
「…無理。てか、ヤダ」

