どうすることもできなくて、薄汚れた壁に背中を預けて立っていると通用口から人が出て行ったのが見えた。
加賀と話していた相手。
そのふっくらした丸い体型とあの渋い声は……間違いない、加賀と話していたのは野球部の監督だ。
間違いないけど、でも、そうしたら…
「…ひぃっ……!」
目の前にある窓から外を眺めていると急にポンと肩をたたかれた。
目を向ければそこには練習着姿の加賀がいて。
…うっわぁ。もっと可愛い声で反応したかった。
「びっくりさせないでよ。もうっ」
「盗み聞きしないでよ。もうっ」
「…さすがにそれは気持ち悪いんじゃないかな。略してきもい」
「反応するとこそこじゃねーしわざわざ略すな」

